奨学生活動レポート|student report

ウィーンは、ウィーン古典派の偉大なる作曲家ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、そしてシューベルトの生活の薫りが今も息づくハプスブルグ王朝の国民都市です。此処では、芸術と生活が密着しています。作曲家の遺産が点在し、街の中心には作曲家が生活を営んだアパートや、偉大な楽曲が初演されたホールがあり、郊外には偉大な作曲家が通ったレストランやホイリゲ、散歩道が広がります。楽友協会、コンツェルトハウス、国立オペラ座では、世界屈指の演奏家が毎晩のように響宴を繰り広げていて、これらを立見席ならばたったの5ユーロほどで聴くことが出来るのです。

ウィーン国立オペラ座

ウィーン楽友協会

コンサートの機会は学生に対しても与えられ、学内優秀者であれば、憧れのホールでの演奏の機会にさえ恵まれます。原則週一回90分のピアノレッスンは、しばしば週複数回一回3時間以上に及びます。楽譜の徹底的な読み込みが厳しく求められ、その作品の知識のみならず、作曲家の作曲スタイルから他分野の諸芸術である当時の絵画や文学の潮流はもとより、ラテン語の教養、キリスト教やギリシャ神話やそれぞれの民族がキリスト教伝来以前に有していた民族宗教の視点からの楽曲分析等々、作品に対して全人格的に取り組む姿勢が、常に要求され続けます。
『芸術家は、深い思考を巡らせる人物でなければいけない。哲学や宗教、文学、他分野の芸術に深い想いを馳せながら、たった一人で森の囁きに耳を傾けられるような、非俗人的な人格をもたなければならない』(ミヒャエル・クリスト教授)。
聴衆の精神に直接訴えかけようとするドイチェン音楽を、真に理解するための思考法や膨大な知識の蓄積と、それらを如何にして実際に音として表すかに必要な職人的メカニックの両者を学んでいます。錚々たる大芸術家を輩出した指揮科の水準は極めて高く、私自身も指揮法と指揮伴奏法を学んでいます。圧倒的な「知」からアプローチする音楽創りは、作曲家が何を考え思い音符を記したのかの要素抽出に全精力を注ぎます。恣意的ではなく呼吸のように自然なアゴーギクが要求される点も、ピアノ演奏に還元したいと熱望しております。

ウィーン国立音大 ピアノ科校舎

ウィーン国立音大 本校舎

最後に、他国の学生は日本に対して敬意と強い関心を持っており、日本の政治、宗教、歴史に関する質問が、必ず毎回投げ掛けられます。彼らの問いに対し、正しい歴史認識や知識で答えることが求められ、留学生は一人々々の背に「日の丸」を背負っているかのようです。私たちへの評価が、そのまま将来の日本に対する評価に繋がるといっても過言ではありません。自戒を込め、日本人として責任ある言動が求められる由縁です。